なぜ太陽光発電に保険なのか
屋外に設置される太陽光発電は、発電量の低下などをはじめとする機械的なトラブルのリスクに加え、悪天候や自然災害などによる損傷リスクも抱えています。 発電した電力から収益を得る大切な資産だからこそ、万一のリスクに備え、しっかりと対策を講じておくべきでしょう。
もちろん、太陽光発電システムにはメーカー保証があります。住宅用のシステムであれば出力保証10年~20年、機器保証10年などが一般的です。 しかしながら、保証の範囲で対応できないトラブルもあるため、保証とは別に保険に加入する方も多く見受けられます。 特に産業用太陽光発電は、住宅用と比べて機器保証が長くはありません。 その上、野立て発電やミドルソーラーといったフィールド設置型のシステムは、人気の無い広大な敷地に位置することが多く、 損傷リスクはもちろん盗難などのリスクも一段と高くなります。
また、メガソーラーなどの大規模なシステムとなれば、建設費も非常に高額なものとなります。 建設のために融資を受ける際は、保険加入を融資条件として提示されることも珍しくありません。 確実に長期的な利回りが期待できる太陽光発電は魅力的な資産である一方、いつ起こるかわからないリスクに備えて、万全の体制で運営していくべきなのです。
太陽光発電の保険の種類
では、太陽光発電の保険には、とういった種類があるのでしょうか。主なものに以下の3つがあります。
保険の種類 | 火災保険 | 施設賠償責任保険 |
---|---|---|
保険の範囲 | 火災、落雷、破裂・爆発、風災、雹災、雪災、水漏れ、騒じょう労働争議等、車両・航空機の衝突等、建物の外部からの物体の衝突等、盗難、水災、電気的・機械的事故、その他偶然な破損事故等。 | 施設の安全性の維持・管理の不備や構造上の欠陥、施設の用法に伴う仕事の遂行が原因となり、起こった事故による損害を補償。 |
対象の範囲外 | 保険の対象の欠陥によって生じた損害(性能不良等)保険の対象の摩耗、使用による品質もしくは機能の低下、さびまたは腐食によって生じた損害等(劣化による故障等) | |
保険料率 | 1.5%〜2.5% | - |
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火災保険
保険の範囲
火災、落雷、破裂・爆発、風災、雹災、雪災、水漏れ、騒じょう労働争議等、車両・航空機の衝突等、建物の外部からの物体の衝突等、盗難、水災、電気的・機械的事故、その他偶然な破損事故等。 保険料率
1.5%〜2.5%
-
施設賠償責任保険
保険の範囲
施設の安全性の維持・管理の不備や構造上の欠陥、施設の用法に伴う仕事の遂行が原因となり、起こった事故による損害を補償。 保険料率
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※いずれも保険の対象の欠陥によって生じた損害(性能不良等)保険の対象の摩耗、 使用による品質もしくは機能の低下、さびまたは腐食によって生じた損害等(劣化による故障等)は対象外となります。
火災保険では、火災に加えて落雷、風災・雹災・雪災、落下・飛来などによる損害が補償されるため、これに加入することが一般的です。 また、火災保険の場合は太陽光発電システムを設置する建造物に付けた保険に加入することも基本的に可能となっています。
しかし、産業用太陽光発電を運営する上で考えうるリスクはこれだけではありません。 広範囲にわたってリスクをカバーするためには、火災保険以外の保険のことも考えなければなりません。
施設賠償責任保険は、管理上の不備や業務上のミスによって生じた偶発的な事故によって、 他人にケガを負わせてしまったり、他人の物を壊したりした際の損害(損害賠償金や争訟費用等)に対して補償してくれる保険です。
施設賠償責任保険は、第三者に対する損害賠償責任が発生した場合に限られていて、ここが火災保険と異なる部分といえるでしょう。 また、施設賠償責任保険の良いところは、補償額が大きい割に保険料が比較的安く設定されているところです。
保険料の目安はどれくらい?
トラブルやリスクが多いとされる産業用太陽光発電の保険料は、一体どれくらいが目安なのでしょうか。 これは保険金額をあらかじめ設定し、その保険金額に応じて年間保険料が決定されます。 また、火災保険、動産保険、施設賠償責任保険といった保険の種類に応じて金額は異なりますが、概ね以下のように算出されます。
5,000万円と設定した場合
= 75万円~125万円/年(保険料)
このケースでは、年間75万円から125万円が保険料の目安となります。 保険料率は1.5%~2.5%ですので、保険金額5,000万円に保険料率1.5%~2.5%を掛けることで年間保険料を算出することができます。
太陽光発電事業向けに作られた独自の商品
このような代表的な保険のほかに、基本となる保険に特約を付加したサービスも登場しています。
損保ジャパンが提供しているサービスに、火災保険をセットにした「売電収入保障特約」というものがあります。 太陽光発電が自然災害や火災などで被害に遭い、当初の事業計画で予測していた発電量に達しなかった場合に、その減少分を補償するというものです。
また、太陽光発電は地域の日射量や気候変動に影響を受けやすいシステムですので、事故が起きなかった場合の予想売電収入の算出が難しいケースもあります。 そこで、損保ジャパンではNEDOが公表している地域別、月別の発電量を基準に予想売電収入を算出することで、 売電収入減少に伴う実態に即した営業利益の減少分を算出し、補償を行うといった対応がとられています。
余談として、事故発生によって売電収入に影響が生じた場合は、それに伴う人的負担も補償されることになっています。 当初予想を上回る売電収入があった場合でも追加保険料は必要なく、下回った場合には保険料の一部が差し戻されるというケースもあるようです。
当初から野立て発電やメガソーラーといった発電事業を取り巻くリスクは事業への参入障壁となっていましたが、 このような特約付き保険が登場したことにより、発電事業へ参入するハードルは以前よりも低くなりました。 現在、さまざまな保険会社が事業規模に応じて内容を最適化した保険を提供していますので、 興味を持たれた方は一度各保険会社のウェブサイトを見たり、お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。